豊かな日本語表現のために

・作文実践

本多勝一『新版 日本語の作文技術』(朝日文庫、2015年、600円+税)(Amazonへのリンクはこちら
もはや古典とも言うべき本。「修飾の順序」「句読点のうちかた」を中心に、創作論や「心がまえ」や文体論ではない、読む側にとってわかりやすい文章を書く技術が紹介されています。


阿部紘久『文章力を伸ばす』(日本実業出版社、2017年、1300円+税)(Amazonへのリンクはこちら
著者がこれまで書いてきた文章本の集大成。日本語の文章を書く81のポイントを紹介。「主語を断りなしに変えない」「重複を排す」「修飾語は直前に置く」などは翻訳者にも役立つでしょう。


石黒圭『うまい!と言わせる文章の裏ワザ』(河出書房新社、2014年、1400円+税)(Amazonへのリンクはこちら
文章を書くうえでの「定石」と「裏ワザ」33個を、「文法」「文末」「語彙」「表記」「構成」の5分野で紹介。例えばルール01「テニヲハはきちんと守る」では、オモテ「文法を守ることは作文の基本である」、ウラ「ズレた使用が表現の幅を広げ、文学性を与える」と解説されています。


石黒圭『大人のための言い換え力』(NHK出版新書、2017年、820円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「知的な表現」と「わかりやすい表現」、「正確な表現」と「やわらかい表現」、「ダイレクトな表現」と「イメージ豊かな表現」、「素直な表現」と「穏やかな表現」、「シンプルな文章」と「詳しい文章」を対比させ、言い換える方法を検討しています。状況に応じた表現の引き出しが豊かになる本。


古郡廷治『文章添削トレーニング』(ちくま新書、1999年、660円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「完全な文を書く」「短い文を書く」「肯定・能動の文を書く」「結束性のある文を書く」など、文章を書く八つの原則を提示。和訳ですぐ実践できる指摘に満ちあふれています。


ページトップへ ホームへ

・辞典、事典、用語集、スタイルガイド

JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)
日本翻訳連盟(JTF)が発行している日本語表記ガイドライン。英訳版JTF日本語スタイルチェッカー、「JTF標準スタイルガイド12のルール」、「項目別表記スタイル一覧表(クリックするとExcelファイルが自動的にダウンロードされます)」も公開されています。


「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)
文化庁の文化審議会国語分科会が2014年に発表したもの。「会う」「合う」「遭う」、「上がる」「揚がる」「挙がる」など、日常的な言葉の意味の違いが簡潔にまとめられています。


石黒圭〔編著〕『日本語文章チェック事典』(東京堂出版、2021年、1800円+税)(Amazonへのリンクはこちら
文章をセルフチェックするポイントを伝授。「表記」「語彙」「文体」「文法」「文章」「修辞」の章ごとに「チェックポイント」と修正前、修正後の文や文章が示されています。例えば4.1.「文型の選び方」の1.「精度の高い助詞の使い方」(P186〜193)にある「『で』が繰り返される場合、どう言い換えればよいですか?」や「『〜の〜の〜』となる場合はどうすればよいですか?」などは翻訳でもすぐ役立つでしょう。


一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会〔編著〕『日本語スタイルガイド(第3版)』(テクニカルコミュニケーター協会出版事業部会、2016年、2600円+税)(Amazonへのリンクはこちら
実用文を書くための指針の集大成。翻訳者には特に「第2編 日本語スタイルガイド」が、「能動態、受動態を使い分けて、視点に一貫性を持たせる」「修飾語は修飾する語句に近づける」「『する』を付けて動詞形にできる名詞に、『行う』などを付けない」など、注意事項が項目ごとに簡潔にまとまっていて役立ちます。


共同通信社〔編〕『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』(共同通信社、2022年、1900円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「新聞漢字・仮名遣い」「書き方の基本」「用字用語集」「紛らわしい法令関連用語」「外国の地名・人名の書き方」など、日本語の文章を書くうえでの規範が載っています。

ATOKの連携電子辞典には、以下のものがあります。
共同通信社 記者ハンドブック辞書 第14版 for ATOK

「共同通信社 記者ハンドブック辞書 第14版 ATOK (Tech Ver.33以降)対応モジュール」が公開されています。


NHK放送文化研究所〔編〕『NHK漢字表記辞典』(NHK出版、2011年、1800円+税)(Amazonへのリンクはこちら
2010年改定の常用漢字表に対応し、全面改訂されました。約3万5,000語を収録。内閣告示されている「常用漢字表」「現代仮名遣い」「送り仮名の付け方」を踏まえた、NHK独自の表記法がまとめられています。

ATOKの連携電子辞典には、以下のものがあります。
NHK漢字表記辞書2015 for ATOK


類語研究会〔編〕『正しい言葉づかいのための 似た言葉使い分け辞典』(創拓社出版、1991年、2233円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「愛」「言う」「普通」などのキーワードから類語を調べられます。「使い分け例」「どう使い分けるか」という形で解説。創拓社出版の辞典はサイズが小さい上、コンパクトにまとまっていて引くのに便利です。使える本。


井上宗雄〔監修〕『言いたい内容から逆引きできる 例解慣用句辞典』(創拓社出版、1992年、2233円+税)(Amazonへのリンクはこちら
戸谷高明〔監修〕『言いたい内容から逆引きできる 故事ことわざ活用辞典』(創拓社出版、1993年、2233円+税)(Amazonへのリンクはこちら
吹野安〔監修〕 / 石本道明〔編〕『言いたい内容から逆引きできる 四字熟語活用辞典』(創拓社出版、1993年、2233円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「言いたい内容から逆引きできる」3冊。キーワードから検索できます。


岩田麻里〔編〕『和語から引ける 漢字熟語辞典 新装版』(東京堂出版、2024年、3000円+税)(Amazonへのリンクはこちら
和語の見出し語から対応する漢字熟語を確認できます。例えば「はっきり」を引くと「画然」「顕著」「自明」「鮮明」など12個の漢字熟語が出てきて、和語より具体的な表現を知ることができます。


西谷裕子〔編〕『「言いたいこと」から引ける 敬語辞典』(東京堂出版、2019年、1800円+税)(Amazonへのリンクはこちら
敬語が尊敬語、謙譲語、丁重語、丁寧語、美化語、改まり語に分類され、通常の言葉から引けるようになっています。例えば「言う」を引くと尊敬語で「言われる」「おっしゃる」「仰せられる」「仰せになる」、謙譲語で「申し上げる」、丁重語で「申す」が出てきます。


小内一〔編〕『てにをは辞典』(三省堂、2010年、3800円+税)(Amazonへのリンクはこちら
この辞書には国語辞典のような言葉の説明はありません。二つ以上の言葉の結びついた形(著者は「結合語」と呼んでいます)を引くための辞書です。「を」「が」「に」「の」などの助詞を介して結びつく結合語や、形容詞や副詞などとの結合語が収められていて、しっくりくる言葉を探すのに役立ちます。

小内一〔編〕『てにをは連想表現辞典』(三省堂、2015年、3200円+税)(Amazonへのリンクはこちら
『てにをは辞典』の続編と言うべき辞書。現代作家約400人の作品による22万の文章例を分類。「挨拶」「握手」といった語句の入った表現や、関連表現を調べられます。


飯田朝子 / 町田健〔監修〕『数え方の辞典』(小学館、2004年、2200円+税)(Amazonへのリンクはこちら
数えられる対象の他、助数詞、単位から引くことができます。和訳の際に便利。一般的な単語はもちろん、「あぶみ」「破魔矢」といった古い物から、「ガラス」「ボレロ」といった外来語まで載っています。


小学館辞典編集部〔編〕『句読点、記号・符号活用辞典。』(小学館、2007年、2200円+税)(Amazonへのリンクはこちら
200の記号や符号の名称、意味を解説。IMEやATOKでの入力方法、文字コードも記載されています。


森田良行『基礎日本語辞典』(角川書店、1989年、4800円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「あいかわらず」「あいだ」「あいにく」など、一見分かりやすい基礎語の意味や用法を分析し、関連語を紹介。


柴田武 / 國廣哲彌 / 長嶋善郎 / 山田進『ことばの意味』(平凡社ライブラリー、2002年、1100円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「アガルとノボル」「サガル・オリル・オチル・クダル」など、似ているようで違うことばを簡潔に分析。「当たり屋」とは言うけど「ぶつかり屋」と言わない理由は?

柴田武 / 國廣哲彌 / 長嶋善郎 / 山田進 / 浅野百合子『ことばの意味2』(平凡社ライブラリー、2003年、1200円+税)(Amazonへのリンクはこちら
『ことばの意味』の続編。「アケル・ヒラク」「オモウ・カンガエル」など、似た言葉の共通点や相違点が分析されています。歴史的な経緯によるのではなく、現代語を共時的に分析しているのが特徴。

柴田武 / 國廣哲彌 / 長嶋善郎 / 山田進 / 浅野百合子『ことばの意味3』(平凡社ライブラリー、2003年、1300円+税)(Amazonへのリンクはこちら
『ことばの意味』シリーズ完結編。前2巻が動詞のみであったのに対し、この巻ではさまざまな品詞から語が選ばれています。「ヨウダ・ラシイ・ダロウ」「チガウ・ベツノ・ホカノ」など。


ページトップへ ホームへ

・文法

庵功雄『新しい日本語学入門 ことばのしくみを考える[第2版]』(スリーエーネットワーク、2012年、2000円+税)(Amazonへのリンクはこちら
現代日本語に関する最新の言語学的考察を網羅。前提となる知識がなくても読めるよう工夫されています。「格」「主題と主語」「ボイス」などを解説。


石黒圭〔編著〕『日本語てにをはルール』(中経の文庫、2012年、571円+税)(Amazonへのリンクはこちら
読みやすい日本語を書くためのルールを解説。「てにをは」の他にも「言葉選び」「かなと漢字」「敬語」「文章の仕上げ方」について触れています。


石黒圭『「接続詞」の技術』(実務教育出版、2016年、1400円+税)(Amazonへのリンクはこちら
接続詞を「論理」「整理」「理解」「展開」に分け、実例を交えて使い方を紹介。


庵功雄 / 高梨信乃 / 中西久美子 / 山田敏弘(松岡弘〔監修〕)『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(スリーエーネットワーク、2000年、2200円+税)(Amazonへのリンクはこちら
庵功雄 / 高梨信乃 / 中西久美子 / 山田敏弘(白川博之〔監修〕)『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(スリーエーネットワーク、2001年、2400円+税)(Amazonへのリンクはこちら
「文章を書くというには、日本語を外国語として取扱わなければいけない」(清水幾太郎『論文の書き方』(岩波新書、1959年、700円+税)、P81)という観点からすれば、ノンネイティブに日本語文法を教えるための本も有益でしょう。日本語ネイティブが意識せずに使っている言葉が、懇切丁寧に解き明かされています。


ページトップへ ホームへ