翻訳のためのPCと設定

1. パソコンの購入−BTOという選択肢
1.1. 基本パーツ
1.2. 付属品
1.3. インストール
2. 各種設定
2.1. Windowsの設定
2.2. マウスの設定
2.3. 秀丸エディタの設定
2.4. 日本語入力の設定
2.5. メーラーの設定
3. 終わりに


*OSはWindowsとします。

「【書誌(実務編)】翻訳のためのPC本」「【PC】翻訳のためのソフトウェア」もご参照ください。

1. パソコンの購入−BTOという選択肢

翻訳をするのに、機能的にはメーカー製のパソコンで十分です。ただ余分なソフトウェアが入っていたりもするので、BTOなら用途に応じたものを購入でき、費用を抑えられる可能性があります。

BTOはBuild To Orderの略で、注文を受けてから組み立てる生産方式です。そのため顧客の要望に応じ、パソコンをカスタマイズできます。以下、BTOパソコンを購入する前提で話を進めます。

BTOについては、「専門家に聞いた!BTOパソコン・ゲーミングPCおすすめの買い方 - ツカエルサイト」をご参照ください。そもそもBTOパソコンとは何か、そのメリットとデメリット、購入のポイント、店舗の紹介など必要な情報が網羅されています。

私は秋葉原のTSUKUMO eX.(ツクモイーエックス)に直接行って店員と相談しましたが、問い合わせフォームから尋ねることもできます。「専門家に聞いた!BTOパソコン・ゲーミングPCおすすめの買い方 - ツカエルサイト」に問い合わせ方の例も書いてあります。

*パソコンが10万円以上になる場合、会計で減価償却する必要があります。詳細は「【経理】翻訳者の青色申告(準備編)」「【経理】翻訳者の青色申告(仕訳編)」をご参照ください。


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1.1. 基本パーツ

パソコンで、最低限必要なパーツは次のとおりです。詳細は、BTOパソコンショップの店員さんと相談されるとよいかと思います。

マザーボード
文字通り、コンピューターの母体となる基板。LANや音源の機能があらかじめ付いているものが最近では多くなっています。

CPU
翻訳作業専用PCの場合、それほど高性能、高価でなくても十分使えます。マザーボードとの相性があるため注意が必要です。

メモリ
容量を大きめにしておくと、PCの性能が上がります。マザーボードとの相性があるため注意が必要です。

内蔵ソリッドステートドライブ(SSD)
OSのインストールに最低1台必要です。翻訳に必要なソフトウェアとデータだけなら、80GBで十分足りるでしょう。私の場合、データは外付けのハードディスクドライブ(HDD)に入れているためSSDは1台のみでソフトウェアしか入れておらず、パーテーションも切っていません。

*データを外付けHDDに入れているのは、パソコンが故障して動かなくなった場合、別のパソコンに外付けHDDをつないで作業を再開できるからです。

HDDをもう1台用意しデータのバックアップをしておくと、危険を回避できる可能性が高まります。私は外付けHDDを2台、データ用とバックアップ用に用意しBunBackupというソフトウェアでバックアップしています。

CD兼DVDドライブ
外付けのものも売っています。

グラフィックスカード
画像を表示させるためのボードです。マルチディスプレイにする場合、対応しているカードを選ぶ必要があります。

マルチディスプレイとは、1台のPCで複数のディスプレイを使用することです。

Windowsはマルチディスプレイに対応しています。利点には以下のことがあります。

◎画面が広い分、作業がしやすい。
◎片方のディスプレイが壊れても、もう片方のディスプレイで作業を続行できる。

大きなディスプレイを使ってもいいですが、故障などのリスクを考えると最低2枚持っているのが無難です。

メーカー製のPCの場合、グラフィックスカードの関係でマルチディスプレイに対応していないものがあります。詳細は、BTOパソコンショップの店員さんにお尋ねください。

筐体
PCのケースです。たいていの場合、電源が内蔵されています。筐体と電源を個別に買うこともできます。

その他、必要なカードやケーブル
プリンタやスキャナといった周辺機器と接続する際、必要になることがあります。


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1.2. 付属品

以下、本体以外で必要と思われるものを列挙します。これまで使用していたものがある場合、使い回すことも可能です。

OS
複数のPCを作る場合、その数だけWindowsを購入する必要があります。一つのCD-ROMから複数のPCにインストールして使用したら犯罪となります。

ディスプレイ
マルチディスプレイにするなら2枚必要です。グラフィックスカードとの相性に注意が必要です。

キーボード
メーカー製のPCのものをそのまま使うより、自分にあったものを探して使う方が、入力の負担を軽くできる可能性があります。

マウス
ボタン数が5個以上で、ホイールボタンのあるものがお薦めです。X-Mouse Button Controlというソフトウェアで、マウスボタン、ホイール、チルトに任意の機能を割り当てることもできます。

スピーカー
スピーカーを搭載したディスプレイもあります。

切替器
複数のPCで、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカーを共有する装置です。PCが1台の場合は必要ありません。最近はディスプレイも安くなっているので、PCごとにディスプレイを用意するやり方もあります。


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1.3. インストール

パソコンが届いたら、必要なソフトウェアをインストールします。OSやウイルス対策ソフトウェアは、あらかじめインストールしておいてもらうこともできます。

*各ソフトウェアのシリアルナンバーを一つのファイルにまとめて書いて保存しておくと、コピー&ペーストできて便利です。セキュリティの面で不安はありますが。

ソフトウェアによっては、設定を保存、復元できる場合があります。詳細は「【PC】翻訳のためのソフトウェア」をご参照ください。


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2. 各種設定

2.1. Windowsの設定

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「shell:startup」と入力して「OK」を押すと「スタートアップ」フォルダーが開きます。そこにメーラーやインターネットブラウザーなどのショートカットアイコンをコピーすると、起動時に実行させることができます。

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「shell:sendto」と入力して「OK」を押すと「SendTo」フォルダーが開きます。そこにショートカットアイコンをコピーすると、右クリック時に表示される「送る」言語バーメニューにソフトウェアを追加できます。秀丸エディタを入れておくと便利。

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「SystemPropertiesPerformance」と入力して「OK」を押すと「パフォーマンス オプション」ダイアログが表示されます。その「視覚効果」タブで「パフォーマンスを優先する」を選択すると動作が速く快適になります。

ファイルのサイズや種類、更新日時が表示されるようにすると便利です

Windows 11:フォルダウィンドウの上にある「表示」で「詳細」を選択します。

ファイルの拡張子を表示すると、ファイルの種類の変更がやりやすくなります。

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「control admintools」と入力して「OK」を押すと「Windows ツール」フォルダーが開きます。「コントロール パネル」-「デスクトップのカスタマイズ」-「エクスプローラーのオプション」-「表示」タブで、「登録されている拡張子は表示しない」のチェックを外します。

ただ、拡張子を変更するとファイルが正常に機能しなくなることがあるため、注意が必要です。


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2.2. マウスの設定

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「control admintools」と入力して「OK」を押すと「Windows ツール」フォルダーが開きます。「コントロール パネル」-「コンピューターの簡単操作」-「コンピューターの簡単操作センター」-「マウスを使いやすくします」-「反転色(特大のフォント)」を選択すると、マウスカーソルが見やすくなります。

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「control admintools」と入力して「OK」を押すと「Windows ツール」フォルダーが開きます。「コントロール パネル」-「コンピューターの簡単操作」-「コンピューターの簡単操作センター」-「マウスを使いやすくします」-「マウス ポインターをウィンドウ上に合わせたときにウィンドウを選択します」

Windows 11「Windows + R」「ファイル名を指定して実行」を起動、「control admintools」と入力して「OK」を押すと「Windows ツール」フォルダーが開きます。「コントロール パネル」-「コンピューターの簡単操作」-「コンピューターの簡単操作センター」-「マウスを使いやすくします」-「ウィンドウが画面の端に移動されたとき自動的に整列されないようにします」

Windows 11「Windows + X」で「設定」-「Bluetooth とデバイス」-「マウス」-「ホバーしたときに非アクティブ ウインドウをスクロールする」をオンにすると、マウスカーソルが重なったウインドウでマウススクロールを有効にできます。

Windows 11「Windows + X」で「設定」-「Bluetooth とデバイス」-「マウス」-「マウスの追加設定」を選択すると「マウスのプロパティ」が開きます。「ポインター オプション」で「Ctrl キーを押すとポインターの位置を表示する」をチェックすると、Ctrl キーを推すとマウスポインターの位置が表示されるようになります。

ボタンの割り当てを変えると使いやすくなることがあります。ちなみに私の設定は以下の通りです。X-Mouse Button Controlというソフトウェアで、全般の設定以外にソフトウェアごとにも設定しています。

全般の設定
左側面のボタン BackSpace
左ボタン クリック(既定)
ホイールボタン Enter
右ボタン ダブルクリック
右側面のボタン 右クリック

BackSpaceは、Internet Explorerなどのソフトウェアで「戻る」の機能も果たします。そのため、表向きの操作は変わりません。

ダブルクリックの速度は最速にしてあります。ファイルやフォルダの名前を変更する際、アイコン上で通常のクリックを2度実行しますが、その際ダブルクリックとみなされてしまうのを防ぐためです。

秀丸エディタでの設定(全般の設定と異なるもののみ)
ホイールボタン(中クリック) Buckeyeさん作の秀丸マクロ(Copy_LST.mac、最後に編集した位置へのコピー)
左トリプルクリック(右ボタンと左ボタンの同時押し) Buckeyeさん作の秀丸マクロ(Copy_LST-3cl.mac、最後に編集した位置へのコピー)

こちらから、Buckeyeさん作の秀丸マクロを入手できます。

*Copy_LST.macとCopy_LST-3cl.macでは動作がやや違うので使い分けています。Copy_LST-3cl.macはCopy_LST.macがないと動作しません。


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2.3. 秀丸エディタの設定

フォントは等幅フォントを選択します。すべての文字が同じ幅であるフォントを等幅フォント、文字ごとに最適な幅が設定されたフォントをプロポーショナルフォントと言います。プロポーショナルフォントの場合、VV(大文字のvを続けたもの)とW(大文字のw)といった文字の区別がつきづらいことがあります。

「その他」-「ファイルタイプ別の設定」-「フォント」で等幅フォントに設定します。秀丸エディタの設定では等幅フォントとプロポーショナルフォントが分けて書かれているため、迷うことがありません。

「その他」-「ファイルタイプ別の設定」-「体裁」-「詳細」で「行番号の計算方法」を「エディタ的」にしておきます。折り返しも1行とする「ワープロ的」な行番号では、折り返し文字数が違うと位置が合わなくなり、取引先などに行番号を指定する際に支障をきたします。

半角スペースや全角スペース、タブはそのままだと区別がつきません。しかし、記号で表示するようにしておくと間違えることがなくなります。

「その他」-「ファイルタイプ別の設定」-「デザイン」で「タブ文字」「全角空白」「半角空白」にチェックを入れると、タブや全角スペース、半角スペースを見た目で区別できるようになります。

「その他」-「動作環境」-「表示/操作」に、「スクロールしてもカーソル位置は固定」があります。

「その他」-「動作環境」-「常駐機能」で「秀丸エディタの常駐」と「クリップボードの履歴を取る」をオンにすると、切り抜きやコピーした内容をクリップボード履歴から取り出すことができます(「クリップボードの履歴を取る」でショートカットキーを設定しておくと便利)。取り出した項目は、秀丸エディタ以外のソフトウェアでも利用可能です。

「その他」-「キー割り当て」で、キー操作の割り当てを自分好みに変更できます。「その他」-「キー割り当て」-「保存」でキー割り当てを保存し「その他」-「キー割り当て」-「読込み」で保存したキー割り当てを読み込めるので、他のPCの秀丸エディタへ設定を簡単に移行可能です。

「その他」-「ファイルタイプ別の設定」-「その他」-「バックアップ」で、「バックアップファイルの作成」にチェックを入れましょう。必要に応じて「詳細」を設定します。

「その他」-「設定内容の保存/復元」で設定内容をファイルに保存できます。

「【書誌(実務編)】翻訳のためのPC本」「秀丸エディタ」「【PC】翻訳のためのソフトウェア」「秀丸エディタ」もご参照ください。


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2.4. 日本語入力の設定

*日本語入力ソフトはATOKとします。Microsoft IMEその他については私がユーザーでないのでわかりません。

スペースキーとShiftキーを同時に押すと、半角スペースを入力できます

◎ATOKの自動登録の設定は言語バーメニューかATOKツールの「プロパティ(環境設定)」-「辞書・学習」タブの「詳細設定」で行えます(詳細はジャストシステム「学習、自動登録のON/OFFの設定を変更したい」)をご参照ください。自動登録された単語を削除するには言語バーメニューの「辞書メンテナンス」かATOKツールで「辞書ユーティリティ」-「表示」-「絞り込み表示」の「自動登録単語」と「抑制単語」を選択して「OK」をクリックし、表示された単語から適宜削除します。

◎ATOKには推測変換機能があり、言語バーメニューかATOKツールの「プロパティ(環境設定)」-「入力・変換」タブの「推測変換」で設定できます。推測変換の確定履歴を消去するには言語バーメニューかATOKツールの「プロパティ(環境設定)」-「入力・変換」タブの「推測変換」-「確定履歴」で「確定履歴のクリア」をクリックします。

◎日本語入力の際、「単語登録」で短縮形を登録しておくと入力の手間を省け間違いも防げます(「単語登録」という名称ですが、記号やフレーズも登録できます)。以下、登録単語の例を紹介します。

*日本語入力にはローマ字入力とかな入力がありますが、私はかな入力を使用しています。そのため、ローマ字入力の短縮形については分かりません。

*基本的には3文字程度の一般的でない、元の登録単語が思い出しやすい言葉で登録しています。

*登録単語のデータはATOKツールの「バックアップツール」でバックアップできます。

登録単語 短縮形 短縮形の根拠 備考
東京都新宿区西新宿2-8-1 としに 「とうきょうと」「しんじゅくく」「にししんじゅく」の頭文字から 同じ短縮形で「東京都新宿区西新宿2−8−1」も登録しています(ウェブサイトの入力フォームで全角入力を求められることがあるため)。
これは東京都庁の住所です。実際には私の住所を登録しています。
大谷翔平 おおし 「おおたに」の「おお」と「しょうへい」の「し」から 実際には私のフルネームを登録しています。
翻訳者の大谷翔平です。 ほんお 「ほんやく」の「ほん」と「おおたに」の「お」から 実際には私のフルネームを登録しています。
urabone@@section.metro.tokyo.jp なすち 「u」「r」「a」に日本語入力で対応しているキーから これは架空のメールアドレスです。実際には私のメールアドレスを登録しています。
03-5321-1111 わあ 「0」「3」に日本語入力で対応しているキーから これは東京都庁の電話番号(代表)です。実際には私の電話番号を登録しています。
おんさ https://onthebackstage.sakura.ne.jp/ 私のサイト「On the Backstage 翻訳者のための情報源」から
0 「0」に日本語入力で対応しているキーから かな入力だと数字が入力しずらいので登録してあります。
「1」を「ぬ」、「2」を「ふ」など他の算用数字も同様に登録してあります。
全角の「0」も「わ」で登録する方法もありますが、テキストファイルの場合、書き終わった後にSimplyTermsの「整形・編集」タブにある「置換(汎用)」機能で半角から全角、全角から半角に一括置換する方が簡単です。
コンピューター こんひ

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2.5. メーラーの設定

*メーラーは秀丸メールとします。Microsoft Outlookその他については私がユーザーでないのでわかりません。

「設定」-「設定内容の保存/復元」で設定内容をファイルに保存できます。

取引先ごとにフォルダを作り、メールが自動的に振り分けられるようにすると見落としを避けられます。「ファイル」を選択するかアカウントを右クリックして「フォルダの新規作成」でフォルダを作成後、フォルダを右クリックして「プロパティ(フォルダごとの設定)」-「メールの振り分け」で設定します。メールを選択しての「設定」かメール右クリックで「簡単振り分け設定」も使用できます。

*迷惑メールをゴミ箱に振り分けることもでき、「簡単振り分け設定」には「ゴミ箱直行」の選択肢もあります。例えばMastercardを使用していないのに「Mastercardから重要なお知らせ」という件名のメールが来たら迷惑メールの可能性が限りなく高いので、「ゴミ箱直行」にしてしまうのもありでしょう。ただ本当に重要なメールの可能性も否定できませんので、設定は自己責任で行ってください。より詳細な設定については秀まるおのホームページ「迷惑メールフィルターの設定方法」をご参照ください。

メールのテンプレートや署名を設定しておくと、入力の手間を省け間違いも防げます。上記のように作成した取引先のフォルダごとの設定も可能で、フォルダを右クリックして「プロパティ(フォルダごとの設定)」-「テンプレート/署名」で設定します。「設定」-「テンプレート/署名の編集」で作成した署名を使用するか指定することもできます。

テンプレートは例えば「設定」-「テンプレート/署名の編集」の「新規メール用」で次のように書きます。


(取引先名) 御中

いつも大変お世話になっております。翻訳者の大谷翔平です。



160-0023
東京都新宿区西新宿2-8-1
大谷翔平
TEL 03-5321-1111


*郵便番号、住所、電話番号は東京都庁のものです。

指示文を使用することもできます。例えば$c$(QuotedRootBody)という指示文を末尾に挿入したテンプレートを「返信メール用」に設定すると、元のメールが末尾に引用されます。詳細は秀丸メールのヘルプをご参照ください。


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3. 終わりに

長時間の座業に耐えられるよう、椅子はいいものを買いましょう。私は1万円程度のものを使用しています。

PCはたまに開けて、中を掃除しましょう。ファンに埃がたまると、電源が急に落ちる場合があります。


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